お遍路(四国遍路、四国八十八ヶ所めぐり)の白衣・白装束は死装束だった。

白衣・白装束

お遍路さんの象徴的イメージとしての白衣・白装束の意味を知っているだろうか。

一説によると、白衣・白装束は、かつて死装束の意味もあったようだ。

どこで死に絶えても構わないという覚悟のしるしだったのである。

「もし自分が行き倒れたら、そのまま葬ってください」ということだったのか。

四国八十八箇所は四国4県にまたがり、歩いて踏破する距離は1200km以上にもおよぶ。

日数も通常40日から60日かかり、現代においても、通し打ち(四国八十八ヶ所を区切ることなく一気に歩き通すこと)を決意したお遍路さんの3割しか結願できないといわれる過酷な行程である。 

僕が道中出会ったお遍路さんでも、途中で点滴をうけた人、まめが悪化し足の皮が靴底のようにめくれた人、膝の手術をした人等々、体調を崩したり、怪我をする方は少なくなかった。

聞いたところによると、アキレス腱を切ってしまった人、脱水症状で泡をふいて倒れた人もいるらしい。

最悪の例としては、心臓発作で亡くなられた人もいるという。 

とにかく、途中でリタイヤするお遍路さんは多い。

数年間、四国遍路のためのトレーニングを積んできたひとや二十代の若者でさえもリタイヤしてしまう。

それにもまして、食事や水、宿泊・医療事情の悪かった時代には、現代とは比較にならないほど、長旅というものは難行であったにちがいない。

道も険しく、夜盗なんかものさばっていただろうし、もちろんウォーキングシューズのように快適に歩ける履物もない時代である。
 


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確か、英語のtravelすなわち「旅」という言葉の語源はtroubleだったと記憶している。

ジーニアス英和辞典によると、troubleとは、「1、心配、苦労、悩み 2、迷惑、面倒、困難、災難、不運」とある。

洋の東西を問わず、過去において旅というものは、まさにトラブルの連続で、旅人が命を落とすことは多々あったであろう。

ちなみに、四国遍路における「遍路」という呼び名は、かた田舎、へんぴな土地・仏国から遠い場所、という意味の「辺地」「辺土」という言葉が変化したものだといわれている。

ただでさえ旅がトラブルと背中合わせだった時代に、都から見てへんぴな土地であった四国の旅は命懸けであったと思う。

実際、僕も遍路道を歩いていて、道端で無数の遍路墓を見た。

四国遍路の歴史は1000年以上といわれているが、一体どれだけの人が野垂れ死んだのであろうか。

僕は、四国遍路中、苔むした遍路墓を見つけるたびに、彼らがどういう気持ちで歩いていたのかを想像し、複雑な思いで合掌した。

もっとも、現在は白装束・白衣を死装束のつもりで着ているお遍路さんは少ないであろう。

僕が出会った30人前後の歩き遍路の方々でもそういう方はひとりもいなかった。

また一般に流布している遍路の正装イメージ、すなはち、全身白づくめのお遍路さんも僕が出会った歩き遍路の中にはほとんど見当たらなかった。(逆に、バスで巡礼している団体の信者さんたちは、全身白で統一という方々が多かった)

ほとんどの歩き遍路さんは背中に「南無大師遍照金剛」と書かれた白衣を羽織っているのみであり、中には白衣すら身にまとわない若者もいる。

僕個人の意見としては白衣を着ようが着まいが問題はないと思うが、そもそも遍路の正装というのが本当にあるのかさえも疑わしい。

事実、26番金剛頂寺の納経所にあった写真集を見たら、明治時代のお遍路さんたちはほとんど白衣を着ていなかった。現在における全身白の遍路イメージは、どこから生まれたのだろう・・・
 


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もっとも、けがれのないさまや無色であるさまを象徴する白色の衣装は、清浄な状態や無心を決意する良いアイテムだと思うので、着るのも悪くない。

実際に僕が出会ったお遍路さんたちも、進路に悩んでいる若者や、仕事をやめたり、仕事上の問題を抱えている人等、将来に不安を感じていたり、自分が何者なのかを考えるために歩き遍路を決意した人が多かった。

信心の気持ちはなくても、哲学の道として遍路道をとらえているのだ。

心を空っぽにして遍路道を歩いていると、思考がシンプルになり、本当の自分自身が現れてくる。

遍路道を歩けば歩くほど、白衣は体に馴染んでいくはずだ。結願するころには、様々な悩みを解消し、自己再生を果たしているかもしれない。

最後に、前述のように小難しく考えたくない人たちにとっての白装束・白衣の合理的な効用をひとつ。

白衣は目立つし、四国の方々が歩いているひとを瞬時にお遍路さんと見分ける記号のようなものなので、たくさんの出会いのきっかけになる。

普通、道を歩いているひとに突然声をかけたり、ジュースをあげたりするひとはいないと思うが、白衣を着ているとそういうことが頻繁におこる。

四国には、お遍路さんに対する長いお接待文化が根づいているからだ。

四国の方々とふれあうなど、濃密なひとり旅をしたい方は、白衣を着たほうがよいだろう。

また、白色は目立つので、交通事故に巻き込まれる危険も減少させることができる。

ちなみに、背中に「南無大師遍照金剛」と記された白衣は、1番霊山寺や1番ちかくの門前一番街など現地で買うこともできるし、旅立つ前に専門店で購入することもできる。
値段は2000円から2500円程度である。

最後に、現代のお遍路さんのなかで、白衣・白装束を死装束としてとらえている人はいない。現在、歩き遍路で命を落とす人もほとんどいない。

ただ、歩き遍路は、楽ではない。

死ぬ気で歩くくらいの気概は持っていたほうがいいかもしれない。

 


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